皮が革(レザー)になる、とは? 鞣し(なめし)のしくみ、お話しします!
そもそもレザーって何か、ご存知でしょうか?
「動物の皮を剥いだ素材!」
そう、その通り。
でももうちょっと詳しく言うと、
食肉として美味しくいただいた後の余った動物の皮
(この字は生の状態を指します)を、
柔らかく、熱に強く、腐らない状態に加工した素材です。
その加工こそが 鞣し(なめし)といわれ、
皮を革(素材として仕上がった状態を指します)たらしめるものなのです。
革を柔らかくすると書いて、鞣し。
とっても覚えやすい漢字ですが、
テストには出ないことでしょう(笑)
お店に並んでいる革小物を見てもどうやって鞣されたかは
なかなか想像しにくいものですが、
そんな鞣しのことをちょこっとご紹介します。
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1. 剥いだ皮は腐らないように塩漬け保存され、
鞣し工場に向かいます。
冷凍したりすることも。
まだ食物の雰囲気がありますね。
2. 鞣し工場(タンナー)に到着した皮は塩抜きしつつ
血液・汚物なんかの腐ってしまうものを取り除きます。
早速気持ち悪くてすみません。
昔は死んだものを扱う仕事ゆえ、
皮を扱う者は身分がとても低かったのです。
もちろん今はそんなものありません。
素敵な革を作るための尊い仕事ですから。
3. 石灰に漬けて脱毛します。
毛は分解されるので、
シェーバーで剃ったようにジョリっとはしません。
このとき、皮の繊維がほぐれます。
でもまだ序の口、本番はこれから。
4. 革は酸よりアルカリに弱い性質があります。
なので、石灰でアルカリ性に傾いた皮を
酸に浸けて酸性に戻します。
この性質、革と汗に関係します。
汗に含まれる老廃物のアンモニアはアルカリ性なので、
革小物が汗を吸ったままになると
劣化の一因になってしまいます。
革が吸った汗は陰干しで乾かしてあげたり、
夏場はクリーナーで拭いてアンモニアを分解してあげると
革も喜ぶことでしょう!
革ケアについてはこちらの記事もチェック≫≫
5. さて、実は 4 までが下ごしらえ。
ここからが鞣しになってきます。
早速鞣し剤に皮を浸けていきます。
ドラム式洗濯機のように
グルングルン回して行う場合もあります。
この時何が起こるかというと、 3 でほぐれた皮の中の
コラーゲンと鞣し剤とが結合して安定した繊維構造を作り出し、
柔らかく、熱に強く、腐らない革となっていきます。
今ついに、皮が革になったのです。
そしてここが!まさに革の個性を決める大事なところなのです!
タンニンレザーとクロムレザーという分かれ道を迎えます。
少し脱線しますが、それぞれの個性について少し・・
植物タンニン剤とクロム鞣し剤のそれぞれ、
主に結びつく先のコラーゲンの部分やサイズだったり、
結合の仕方がそもそも違ったりするので
革の質感も違ってきます。
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——————————植物タンニン鞣し——————————
文字通り植物の汁を用います。
その中に含まれるポリフェノールには
皮を鞣したり腐らないようにする作用があります。
近代的なクロム鞣しが主流となる前までは、
主な鞣し方法として用いられてきました。
なぜ主流ではなくなったかというと、
鞣し剤に浸ける工程だけで
およそ30日もかかってしまうという手間の多さ。
何段階も踏んで、徐々に濃度の高い鞣し剤の槽に移動して
鞣し進めていくためなのです。
鞣し上りはバリっとハリがあり、
レザー特有の美しい経年変化があるのが特徴。
この経年変化、科学的に解明されてないところも多いんです。
(多分、研究する方もあまりいらっしゃらないんじゃ
ないかと思いつつ、解明するより
肌で感じれば良いっていうものな気もします。)
クロム鞣しに比べて、鞣しの化学反応のサイズがやや大きく、
コラーゲン繊維の間に残るタンニンも多いので
少し不安定とも言える仕上がりから、
製品になってしばらくの間は
その不安定な部分に動きがあるため
説明のつかない見た目の変化がある、なんて説も。
コラーゲン繊維の間に残るタンニンは、
ヌメ革特有のベージュの色のもとでもあります。
———————————–クロム鞣し———————————–
塩基性硫酸クロムという鞣し剤を使用します。
見るからに難しいやつですね。
タンニン鞣しと違い、一度鞣し剤に浸けたら鞣し上がるため、
手間もコストも抑えられます。
質感はもっちり柔らかく、
タンニン鞣しより高い熱にも耐えられ、
鞣し剤の色から青白く鞣し上がるため色の表現の幅も広い。
メリットが多く、世界中のレザーの
8割ほどがクロムレザーと言われていますが、
タンニン鞣しのような経年変化はありません。
ただ、クロム鞣し後にタンニン鞣しを重ねて、
両方の特性を持たせるなんて言う合わせ技もあるのです!
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6. ついに鞣し上がり!個性を得た革を仕上げていきます。
革は乾燥すると繊維同士がくっついて固まってしまうので、
乾燥させる前にオイルを含ませて
繊維の隙間をオイルで満たします。
これは、固まるのを防ぐだけでなく、
水や薬品から革を守ってくれたり
風合いもより良く仕上げることができます。
7. 美しい色に染めたり、
より柔らかくするために揉みあげたり、
裁断・縫製がしやすいように平らに乾燥させていきます。
(どう仕上げるかによって順番は前後しますが。)
8. 仕上がった革の面積や重量をはかったら、完成です!
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今では素敵な革を鞣すレシピはものすごくたくさん存在します。
植物タンニン鞣しは、紀元前600年頃から
地中海沿岸で行われていたと言われていて、
LITSTAでメインに使う「プエブロ」は、
今から1000年前のレシピを現代に蘇らせたもの!
クロム鞣しは1884年頃から実用化されました。
日本に植物タンニン鞣しが導入されたのは明治初期でした。
さらにさかのぼってみると、
アニメの原始人がエプロンのような形の
動物の皮の服を身に着けているイメージってないでしょうか?
動物の皮を利用して服や住居用テント、
生活用品なんかを利用していた形跡があるんだそうです。
(服として革を身に使はじめたのは、7万年前ほど前からなんだとか!)
で、その頃から人は何とか自力で
皮を鞣して活用してきたのですが、
その方法は・・・
木槌で丹念に皮を叩いて繊維をほぐしたり、
手や足でもんだり、歯で噛んだり・・、
燻したり、朽ちた木を煮出した汁に漬けたり、
脳漿(アルカリ性の脳脊髄液)に漬けたり、
魚卵や糞尿に漬けたりと、
考えただけでも気持ちが悪いですが、
やっていることは現在の鞣しの原形なんですね。
そこから長ーーい年月をかけて
今のレシピが出来たと思うと、人間ってすごいですね。
革小物を作るために皮を噛む必要が無いことに、
先人たちに感謝の気持ちでいっぱいです(笑)
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とってもざっくりとした革鞣しのレシピでしたが、
また機会があればより詳しくお送りしたいと思いますが、
ご興味持っていただけるでしょうか・・?
マニアックでしょうか・・?
レザーをより身近に感じてもらえたらうれしいです!
2020 | 11 | 03
Yukari